名は祖静、字は寂然、菜粥居士と号す。通称は専父、後に専三と改む。致仕して莱茹翁と称す。父名は幸助、尾張の賎商なり。菜茹少うして儒を礒谷滄洲、石川香山に学び、又山碕真人及浅井貞庵に従ひて医を学ぶ。適々真人の子没して嗣なし。真人其才学を愛して、乞ひて義子となし、女を以て之に妻はす、因りて山碕氏を冐す。菜茹入と為り、沈静寡黙、謙遜抑退、容貌愚なるが如し。然れども其病理を論じ、方薬を処するに方りては、議論精確にして、更に�闡Rする処なし。始寄合医師に選ばれ、終に奥医師に進み俸百俵を給せらる。歳四十を踰ゆる比、医薬盛に行はれ病客常に門を填む。医て藩命を奉じて父真人及貞庵と与に尾藩禁方集成を撰み、之を官庫に納む。因りて各白銀の賞あり。莱茹一男四女あり。男名は中亭、未だ弱冠ならずして先ちて没す。因りて貞庵の子養吉を乞ひて嗣となす。文政十一年戊子十二月十六日病みて没す。享年五十六。明年の秋養吉亦次いで没す。親族相議して、又其弟総吉を養ひて家系を継がしむ。広見院菜香信士。
　墓碑銘は「山崎菜茹翁之墓」。碑文あり。