通称は新左衛門、人呼んで青松葉という。在綱の家は、「槍の半蔵」と異名のある渡辺半蔵の一族で、二千五百石を賜う。在綱は尾張十五代藩主茂徳に重用され、用人から家老に任用された。常に武術を修め、西洋砲術の利を知り私財を投じて巨砲を鋳造、藩士を集め銃陣法を率先して訓練した。幕末の尾張藩内での在綱は、佐幕党の首魁と目される立場にあった。慶応四年一月二十日、名古屋城二の丸御殿にて、「朝命に依って死を賜う」というだけで、何ら抗弁の機会を与えられぬまま斬首された。この事件は青松葉事件といい、藩内家士団の派閥抗争が勤王帰一表明に便乗しての血の粛清事件であった。時に享年四十九歳。名古屋守綱寺に葬られ、在綱院釈岳丈と諡す。在綱の妻は夫が死を賜った時、邸宅と家財什器を泰然と整理、退去したといい、藩主は格別をもって動産一切を彼女に与え、二男の亘に五十俵を与え跡目相続させたのであった。(三百藩家臣人名事典)
　墓碑銘は「岳丈之墓」