名は直保、字は壽安、惇斎と号し、別に雪堂主人と呼ぶ。奥田直光の長子なり。母は松井氏、元禄十六年癸未三月廿日を以て、尾張葉栗郡北宿村に生る。其先は甲州の人にして武田氏の裔たり。寿安に至りて外姓を冐して、松井氏を称す。医を高橋玄仙に学び、寛保中大津町に住して治療に従ふ、寿安至性篤行、温順にして文を好み、善く医事に勤む。常に楼花を愛し、当て千株の楼樹を八琴山に栽ゑて、都人遊楽の地となし、又楼の句を四方の雅人に講ひ、一巻となして序を横井也有に需め、之を興正寺に納む。明和八年辛卯十月十五日没す、享年六十九。松栄院雪翠日寿。（名古屋市史）
　墓碑銘は「惇斎松井寿安之墓」。碑文あり。